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【終了しました】伝統芸能と自然の関わりvol.6~能の衣装と植物のつながり~

2024年6月15日(日)実施

伝統芸能と自然の深いつながりを紐解き、それらを守り引き継ぐために何が大切かを考えるシリーズの6回目です。能は舞台そのものが木で作られた空間であり、演目の中では様々な自然風景が描かれたり、自然をテーマにしたもの、更には植物の精が主人公のものもあります。また、道具の材料には多くの植物が使用され、装束には実に多様な植物が表現されています。このように、あらゆる場面において自然を取り入れてきた能の世界で、日本各地の間伐材や倒木などから生まれる布(樹木布)で装束を作る初の試みが行われ、そのお披露目公演が間近にせまっています。本講座では、その公演でシテ(主役)をつとめる能楽師と、樹木布で装束を作るお二人に加え、伝統芸能の道具に関連した執筆、復元、研究などを行う講師をお迎えし、日本人が持つ“自然を愛でる心”を現代においてどのように受け継いでいくのかを考えます。

日時
2024年6月15日(土)14:00~16:00(受付は13:45~) 
会場港区立エコプラザ、オンライン(Zoom)
※お申込みいただいた方限定で講座後2週間アーカイブ配信いたします。
対象港区在住・在勤・在学の方を中心とした小学4年生以上の方(小学生は保護者同伴)
※区外の方も参加できます
講師武田 祥照氏(観世流シテ方能楽師)

【プロフィール】
1987年3月19日生まれ。観世流能楽師 武田尚浩の長男。武田家は江戸期より続く能楽の家。1989年 2歳にて初舞台を踏み、以後父の指導のもと、斯道を歩む。現在、一般社団法人能尚会理事。青山学院大学非常勤講師。父・尚浩及び十二世山階彌右衛門に師事し、年間130を超える能公演に出演し研鑽を積む他、年間50あまりのワークショップを行い、能の普及に努める。2020年4月よりYouTubeチャンネルを開設し、オンラインでの発信にも力を入れている。三児の父。

加藤 貴章氏[縁樹の糸(ENGI no ITO) 代表/株式会社シンサイカトー 常務取締役]

【プロフィール】
1984年(昭和59年)生まれ 兵庫県出身。
「森をまとう。新しい木のぬくもり。」をコンセプトに日本各地の樹木と物語をつむぐ。
製品ブランド、縁樹の糸を立ち上げる(2017〜)。以来、木を原料にした再生繊維・
布製品『樹木布』シリーズ、アロマ製品『フォレストミスト』シリーズを手がけている。
日本各地の樹木(富士山の間伐材や高野山の倒木、吉野山の銘木など)から糸、布、香を製作する。
倒木や間伐材、剪定時の端材、建築物や木製品を製造する過程で出る端材廃材などを原料とする。
樹木とそこに宿る想いや歴史を今に活かし未来につなぐべく、一本の糸につむぎ新たないのちのカタチに蘇らせている。また自然とヒトの結びつきを深めることを目的に、文化財の復刻や神社仏閣への作品奉納、環境啓蒙のワークショップなどを行っている。

田村 民子氏(伝統芸能の道具ラボ主宰/ライター)

【プロフィール】
1969年、広島市生まれ。「伝統芸能の道具ラボ」主宰。「芸能道具ミライ研究室」共同代表。
伝統芸能の道具に関連した執筆、調査、復元、講演などを行う。2009年より能楽、歌舞伎などの「伝統芸能の道具」に携わる裏方や職人を支援する草の根活動「伝統芸能の道具ラボ」をはじめる。東京新聞に「お道具箱 万華鏡」を連載中(毎月第二金曜)。
定員会場:15名(先着)※会場のお申込みは定員に達しました。
オンライン:30名(先着)
参加費無料

【当日の様子】
田村氏から、まず最初に自然とダイレクトにつながっている郷土芸能について、鹿踊を例に話がありました。狩猟を生業とする人が多かった東北の郷土芸能であり、自然の恵みへの感謝と命をいただいた鹿・熊・カモシカ・イノシシなどの獣の供養の意味が込められ、道具も竹や馬の毛など身近な自然のものが使用されています。抽象的に自然とつながっている能では、室町時代末期から江戸時代後期の現存する能装束の76%に植物の文様が表現されており、その中の約1%を除き、何の植物であるかが同定できるほど綿密に描かれているそうです。それはヨーロッパの服などに描かれる抽象化された植物の描き方とは違う、日本独特のものであるとのことです。
武田氏からは、まず能の他の伝統芸能との違いとして、元々は神様や仏様に捧げるものであり、仮面をつけて五穀豊穣などを願うものが人へ見せるものへ発展したことだと説明がありました。また、自然を歌う和歌の精神を受け継いでいることも大きな特徴です。次に実物を用いて様々な装束や扇の文様について解説がありました。桜と紅葉など、春と秋の植物両方が取り合わせて描かれているのが能の装束の特徴であり、そのため舞台で一年中着用できるとのことです。また、演目により「袷(あわせ)」「単衣(ひとえ)」「薄物(うすもの)」のどれを着用するかは決められているが、文様は演者が選んでおり、演者の思いが表れると説明がありました。
加藤氏からは、日本各地の間伐材・倒木・建築端材などを使い「森をまとう」をコンセプトに作る樹木布の作成方法や、込められた思いについて話がありました。日本人が古来から持つ木に対する特別な思いや木が持つ物語を、樹木から作りだした糸と一緒に紡いで様々な人がつながって作ることで、自然と人との共生を生み出し、その木が育つ地域の産業や工芸技術の新しい可能性になるようにと考えているそうです。
今回制作した「弱法師」の水衣は富士山の原生であるアカマツやカラマツなどの倒木を使用し、更に演目の舞台である四天王寺の聖水「亀井の水」も使い、草木や土を染め込んだと説明がありました。
トークセッションでは、自然を愛でる心を現代の私たちが受け継いでいくためにできることとして、今着ている物がどこから来て、どんな人がどのような思いで作っているのかを考える時間を持つことで自然を愛でる心や命のありがたさを感じ、暮らしの豊かさにつながるとの考えが示されました。また、四季を愛でることは環境を大切にし、守る上でも大事であると同時に、能を楽しんで鑑賞する上でも必要だとの話がありました。
難しく考えるのではなく、四季を感じたり身の回りの様々な物の背景を考えることが環境を守ること、伝統芸能を受け継いでいくことにもつながると学びました。


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