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【終了しました】黒染から考えるサステナブルなファッションとは

2023年11月24日(金)実施

服の製造過程や廃棄時には、環境や人へ様々な負荷がかかるため、近年ファッション業界では「持続可能な製品作り」が重要になっています。この講座では、汚れたり色あせたりして着られなくなった服を黒く染めることで新たによみがえらせる「黒染」に着目します。黒染師と、黒染めを施した製品作りを行うデザイナーの二人を講師に迎え、ファッションにおける環境問題を始め、伝統技術である黒染の歴史や、黒染とサステナブル・エシカルファッションとの関係を解説します。ブランドに黒染を取り入れることになったきっかけや、それぞれが大切にしていることに加え、今後の展望についても触れます。これからのファッションについてや、今ある服を長く大切に着ることを改めて考えてみませんか?

日時2023年11月24日(金)18:30~20:00(受付は18:15~)
会場オンライン(Zoom)
対象港区在住・在勤・在学を中心とした小学4年生以上の方(区外の方も参加できます)
講師馬場 麻紀氏(五代目黒染師)

【プロフィール】
京都で生まれ、高校卒業後上田安子服飾専門学校にて教員免許所得。
興和商事株式会社、商社にてワコール、ウイング、ムーンバット等のテキスタイルデザイナーとして柄、織の企画を担当する。
その後、株式会社サンコスモに転職。アウターのテキスタイルデザイナーとして各企業と新商品開発。(ライカ、レナウン、山本寛斎、三陽商会等のテキスタイルデザインを担当)
2008年4代目が他界、5代目として黒染めをする。
2012年以降、京まふにて『ちはやふる』公式認定グッズ他黒染グッズ、京都マルイにて『薄桜鬼』グッズを販売するなど、アニメ作品とのコラボ作品を手がける。TV朝日「モーニングショー『継ぐ女神」』」、TOKYO FMラジオ「Honda Smile Mission」始め、メディア出演多数。

藍沢 兆氏(エシカルファッションデザイナー)

【プロフィール】
ヴィジュアル系バンドの元ギタリストという異色の経歴を持つエシカルファッションデザイナー。
2017年末ごろから環境問題や社会問題に関心を持ちはじめ、2018年夏にエシカルコンシェルジュ講座を受講・修了。2020年には自身のエシカルファッションブランドである「兆-KIZASI- MADE WITH JAPAN」を立ち上げ、現在はファッションデザイナーのほかソロアーティスト、アクティビスト、講師など、マルチな活動を行なっている。
音楽やファッションを通してエシカルファッションやサスティナブルライフを広める為に、エシカルファッションショーやトークイベントなど様々なイベントに出演している。
定員30名(先着)
参加費無料

【当日の様子】
藍沢氏から、ブランドの取組と、ファッション業界における環境問題の説明がありました。服の生産過程では綿栽培中の農薬使用による土壌汚染や生産者の健康被害、染色に使われた排水による水質汚染など、消費者の購入後には洗濯などの際に出るマイクロファイバーよる海・生物への悪影響、大量廃棄など様々な問題があります。次に、伝統技術・文化がなぜサステナブルなのかの説明がありました。風土の恵みを活かした天然素材を活用していること、手作業で少量生産のため「少」エネルギーであること、修理が容易で繰り返し長く使えることが挙げられました。馬場染工業での染めは国内でほぼ手作業で行うため電力を必要とせず、一般的に海外で行う染色に比べ、生産時の二酸化炭素排出量を大幅に削減できる見込みがあるとのことです。
馬場氏から黒染めの歴史と染めについての話がありました。江戸時代に武士の間でびんろうじという植物染料による黒紋付が愛用され始め、明治以降にヨーロッパの染色技術や化学染料の導入により、藍染めをしてから黒に染め上げる藍下(あいした)や紅花で下染めする紅下(べにした)などの植物染めと合わせた技法が確立されました。馬場氏が使用する化学染料は、分解により水にごく近い状態に戻る程環境負荷が少ないものとのことです。また、敷地内の「柳の水」と呼ばれる井戸水を使用しており、水にわずかに含まれる鉄分が黒染めに合うそうです。着物の衰退と共に着物を染める量は減り、京黒染の店舗はわずか2、3軒になりましたが、今は服の染め替えとして需要が増えています。
今後の展望として、二人の講師が手掛ける製品で2025年のバンクーバーファッションウィークへ日本発のフェアトレードブランド、エシカルブランドとして参加し、染め替えの習慣がない海外へ向けての発信をすることが挙げられました。
サステナブル・エシカルファッションとして黒染を選択することは、服を繰り返し長く着られるだけではなく、伝統技術を守ることにもつながると学びました。


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