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【終了しました】妖怪の存在から見る自然と人の関わり

2023年3月7日(火)実施

世界の中でも日本にはとりわけ多くの妖怪がいます。それには人間や動物だけでなく、木や山、川、石などにも魂があるという日本特有の考えが根底にあります。古代や中世は自然への畏れが強く、自然に基づく怪異現象が共有されることで、たくさんの妖怪が生まれました。ですが、近世・近代になり開発による都市化が進んだ結果、自然との関わりは減少しました。その一方で、野生動物たちによる農作物への被害など、自然の脅威は増加しています。その中で、妖怪はどのように存在しているのでしょうか?本講座では、自然と人、そして妖怪との関わりから、私たちにとっての自然環境の重要性について考えます。

日時
2023年3月7日(火)18:30~20:00(受付は18:15~) 
会場オンライン(Zoom)
対象港区在住・在勤・在学を中心とした中学生以上の方(区外の方も参加できます)
講師小松 和彦氏(国際日本文化研究センター 名誉教授)

【プロフィール】
東京都出身。1947年生。東京都立大学大学院修了。大阪大学文学部助教授・同教授、国際日本文化研究センター教授、同所長を経て、現在、同名誉教授。専門は、文化人類学、民俗学、妖怪学研究。著書に『妖怪学新考』『妖怪文化入門』『いざなぎ流の研究』『鬼と日本人』『聖地と日本人』等多数。紫綬褒章、文化功労者。
定員50名(先着)
参加費無料

【当日の様子】
まず最初に、妖怪とは超自然的力や存在が介入して生じたとみなす、合理的・論理的に説明できない不思議な現象や存在、生きものであるとの解説がありました。また、日本人の宗教的観念には人間も自然の一部とみなすことや、生物・無機物に限らず、自然界のそれぞれのものに霊魂が宿っているとするアニミズム的な考え方があるとのことです。
そのような日本で、自然が妖怪化したものとして表現される代表的な一つの「大蛇」について解説がありました。「大蛇」は実際には存在しませんが、蛇を前提に、それを幻想化したものであり、龍とも混同されています。地方ごとに言葉は違いますが、山の崩落や土石流、洪水が起こることを「蛇抜け」「やろか水」などと呼び、その土地は災害が起こる可能性があるとして伝承され、元々の住民は住まないようにしてきました。ですが、開発が進みすぎ、自然の猛威を忘れた結果、それらの土地が開発され別の場所から移り住んだ人々が災害に遭う例もあるとのことです。
科学が進歩することで、妖怪の仕業と言われてきたものが実際にはそうではないと解明されたものも多くありますが、各地には妖怪が起こしたと言われていた「蛇抜け」「地震」などの伝承や儀礼、記憶装置としての神社や碑などが残っており、それらをハザードマップやデータベースに載せるべきではないかとの提言がありました。
講座を通して、過去の様々な自然の脅威を単なる妖怪伝承として捉えるのではなく、自然との向き合い方や、共生のあり方を考えることに活かす重要性を知る機会になりました。


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