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【終了しました】森の時間、人の時間~近代における森林保全の矛盾と目指すべき道~

2024年3月2日(土)実施


日本は、国土の約7割を森林が占める国ですが、森の多くは荒廃していると言われています。木材価格の低迷、山村の過疎化、林業従事者の減少など、様々な要因が考えられますが、その根底には、森に流れる時間と歩幅を合わせて生きることができなくなった私たち人間の現実があると言われています。森の木々は数百年、ときに数千年という時間スケールのなかで生きていて、林業として木を育てる場合も、短くても50年の期間はかかると言われていますが、現代を生きる私たちの世界は、1日、1か月、1年と、とても短い期間で日常が変化していきます。変化の激しい現在において、50年、100年を見越して働くことは難しくなりました。しかし、かつての山村や農村では森と人間の共生が実現していました。この講座では、哲学者でありNPO法人森づくりフォーラム代表理事の内山節氏を講師に迎え、昔と現在の自然に対する価値観や時間感覚の違いから、時間を経済価値化する現代が抱える矛盾と森林経営の関係について説明します。また、日本の森林の問題やこれからの森と人の関係のあり方についても解説します。人間と森との関係をどう捉え、私たちはこれからどのように森と関わっていく必要があるのか。森とともに暮らす社会をつくるために必要なことについて一緒に考えましょう。

日時2024年3月2日(土)14:00~16:00(受付は13:45~)
会場オンライン(Zoom)
※お申込みいただいた方限定で講座後2週間アーカイブ配信いたします。
対象港区在住・在勤・在学を中心とした中学生以上の方(区外の方も参加できます)
講師内山 節氏(哲学者/NPO法人森づくりフォーラム 代表理事)

【プロフィール】
1970年代から東京と群馬県上野村の二重生活を続けながら、在野で、存在論、労働論、自然哲学、時間論において独自の思想を展開する。2016年3月まで立教大学21世紀社会デザイン研究科教授。著書に『新・幸福論 近現代の次に来るもの』『森にかよう道』『「里」という思想』『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』『戦争という仕事』『文明の災禍』ほか。2015年冬に『内山節著作集』全15巻が刊行されている。
定員30名(先着)
参加費無料

【当日の様子】
まず最初に、森は様々であるという説明がありました。「日本の森」という単一の概念は存在せず、地域ごとに気候や土などの違いがあり、その土地の特性にあった樹種が育ち、またそこに暮らす人々が森を利用していく中で、土地ごとに独特な森が作られてきました。そのため、森林を保全するための共通の方法はなく、森の特色に合わせた関わりを見つけていく必要があるとのことです。
後半は、時間論から考える森と人の共存について解説がありました。杉の良材を得るには100年、ヒノキの良材を得るには120年と言われています。昔は、自分の暮らす村は永遠に続くという認識があり、自分の仕事も必ず誰かが継承し、100年後に育つ木が良材として扱われる保証がありました。しかし、現代は社会の変化が激しく、100年後も同じような森林管理がされる保証がありません。このような変化は、18世紀後半のイギリスの産業革命から始まりました。物を生産することのみが労働を意味する時代から、時間内に作れるかどうかが問われる時代になり、私たちの働き方や暮らしが時間に支配されるようになったとのことです。時間管理や効率性などの価値を優先する時代において、私たちが森や自然の時間を基盤にして森を捉え直すことができるのかを考えることが大切だと説明がありました。
最後に、これらの現代の時間から脱却しようとする人々について解説がありました。現在は田舎への移住や都市と田舎の二拠点居住など、自然とともに生きる生き方を選ぶ人たちが増えています。これらの人たちに共通しているのは、時間に管理されるのではなく、時間を自ら創造していくことを目指すあり方があるとのことです。田舎の暮らしは、毎年同じことをしているように見えて、毎回少しずつ変化のある自然と関わり工夫を重ね、暮らし自体を創造しています。都市に暮らしながらも、田舎との接点を持ち、都市では得られない自然との時間を意識し暮らしていくことが大切であると説明がありました。
講座を通じて、森と人間の関係を時間論の視点から捉え、森や自然とともに生きるため必要なことについて考える機会となりました。


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